愚者鑑

『北の零年』

新年早々バテバテだったりする。 諸般の事情から、去年の終わりから会社員をはじめたんだけど、やっぱりどうも身体に合わない。親しい人間からはすでに何年も前から「社会不適合者」の烙印を押されているわけだけど、まったく、役者なぼくはなんでもそこそこ…

『南十字星』

ぼくはミュージカルというのが食わず嫌いで、いままで何かそういうものを見た記憶がないのだけど、先週ちょっとした友達関係上の付き合いというやつで浜松町へと足を運んだ。劇団四季のオリジナルミュージカル『南十字星』を見るためである。 で、見た。感想…

『雲のむこう、約束の場所』(2)

総合病院、耳鼻咽喉医院、歯医者と、ここのところ医者をハシゴ状態。ここ何年も医者にかかったことがなかったので、どうも勝手が分からず居心地が悪い。もっとも、医者にかかって心地いいなんていうのはあんまりないのだろうけど。ウチじゃ聞いてもらえない…

『雲のむこう、約束の場所』(1)

何度か風邪をひいて、また調子が悪くなっておとなしく横になっていたら違う病気だった。病院にいって、違う診察科薦められて、そこで診てもらって分かった。 病院とかいかない限りは、「ぜんぶ風邪」なんだよね。名前を付けるとか、名前が付くことの意味って…

『SAW』

それほど注目もしてなかったんだけど、ちょっとタイミングあったので『ソウ(SAW)』(監督:ジェームズ・ワン)を見る。以下、ちょっとした感想。ネタバレあり。 メインの舞台は二人の男が鎖につながれたタイル張りの広いバスルームであり、一見その状況設…

『コラテラル』

先日観た『コラテラル』(監督:マイケル・マン)の感想。例によってネタバレには配慮なし。 ひさしぶりだった。 何がひさしぶりかと言うと、見終わったあとで「これは面白かったのか面白くなかったのか」すぐにピンと来なかった映画が、ぼくにはひさしぶり…

『2046』(3)

前回の続き。 (3) ではなぜ、「世界が二つに解離してしまっている」ことが「やさしさ」につながるのだろうか。 (ここから先、これまでにも増して個人的で「勝手な」読み方が続きます) まずチャウは、自分の魂が「2046」の世界、つまり決定的に幸せの「…

『2046』(2)

昨日からの続き。 (2) さて前回述べたように、この『2046』では全編通して、主人公チャウによる「行きて還りし物語」が徹底的に完遂しない様子が描かれている。チャウの投影としての小説内登場人物タク*1が、まさに「2046」から唯一還ってきた男として設…

『2046』(1)

『2046』(監督:ウォン・カーウァイ)を見る。以下、感想など。ネタバレあり。 (1) 木村拓哉の海外進出作ということもあってか、やたらと宣伝に力が入っているこの作品だが、ぼくの場合もちろんそんなところに興味はない。『いますぐ抱きしめたい』以来…

『アイ,ロボット』

ウィル・スミス主演の『アイ,ロボット』(監督:アレックス・プロヤス)を見る。以下、ちょっとした感想など。ネタバレあり。 我々は境界に対して責任ある存在であり、我々が境界なのである(ダナ・ハラウェイ) ストーリーは押さえどころに対して忠実で、…

『CODE46』

先週見た『CODE46』(監督:マイケル・ウィンターボトム)の感想。ネタバレあり。 感想を一言にするなら、なんとも「微妙な映画だった」ってところだろうか。正直に言って、それほどの感動があったわけでも、とても考えさせられたというわけでもない。ひとつ…

『LOVERS』

『HERO』をそれなりに楽しく見た記憶に引かれて、 『LOVERS』(監督:チャン・イーモウ)も見に行く。以下、思ったことなどを少々。ネタバレあり。 例によってぼくの関心はほとんど物語だけなので、新聞のレビューとかでも絶賛されている色彩感覚や衣装*1そ…

『華氏911』など

旬から外れるとあまり意味がなくなってしまう種類の映画だと思ったので、いくつかの選択肢の中から『華氏911』(監督:マイケル・ムーア)を選んで見に行く。以下、ちょっとした感想、考えたことなど。 ムーアの作品を見るのは前作『ボウリング・フォー・コ…

『スチームボーイ』

タイミングが合ったので映画館へ。『スチームボーイ』(監督:大友克洋)を見る。以下、感想。ネタバレ、少しあり。 例によってぼくの興味はナラティブが中心なわけだけど、その点について言えばこの作品はやや貧弱だったと思う。 この映画では主人公レイが…

『ドラえもん のび太と鉄人兵団』

懐かしさに誘われてドラえもんの長編映画を見る。 1986年の『ドラえもん のび太と鉄人兵団』(監督:柴山努)、ドラえもん長編映画の第7作目。実は再見で、子供のころに見たという記憶だけがあるが内容はまるで覚えていない。同じころに見た映画やテレ…

『シルミド/SILMIDO』

新宿で『シルミド』(監督:カン・ウソク)を見る。以下、ちょっとした感想など。 朝鮮半島の南北問題について大きな関心を持っているわけでもないぼくだけれど、韓国映画を見る機会はそれなりにある。そうすると、例えば『シュリ』や『JSA』、『二重スパ…

『深呼吸の必要』

歌舞伎町で『深呼吸の必要』(監督:篠原哲雄)を見る。 以下、感想。ちょっとだけネタバレあり。 世の中の、まあ少なくない事柄には理由がある。例えば映画について、多くの人は「ブラッド・ピットの主演作だから」とか、「スピルバーグの最新作だから」と…

『ビッグ・フィッシュ』

感動作という評判を頼りに、『ビッグ・フィッシュ』(監督:ティム・バートン)を見に行く。 先週の『世界の中心で、愛をさけぶ』に引き続き、ここのところどうもメジャーどころを鑑賞作に選択している。ミニシアター系からはずいぶん遠ざかって。理由は簡単…

『世界の中心で、愛をさけぶ』(続き)

昨日の続き。引き続き、ネタバレ。 (2) 原作(片山恭一)と映画(行定勲)との最大の違いは、そのテーマの比重をどこに置いているかの違いと言える。この映画版『世界の中心で、愛をさけぶ』においては、アキが死んだ後で朔太郎がどのように世界との関係…

『世界の中心で、愛をさけぶ』

映画『世界の中心で、愛をさけぶ』(監督:行定勲)を見る。 原作を立ち読みで済ませたのがなんとなく悪いような気がして、まあその罪滅ぼし的な感じで映画館へ。原作とはちょっと違ったストーリーらしいという事前情報はあった。個人的な興味はひとつだけで…

『CASSHERN』

先週末公開の映画を2本、見る。そのうち、今回は『キャシャーン』(監督:紀里谷和明)について感想を少々。もう一本のほう、『キル・ビル Vol.2』(監督:クエンティン・タランティーノ)の感想はパス。 以下、ネタバレ。例によってほとんど「物語」の側…

『APPLESEED』

引き続き、『アップルシード』について。以下、ネタバレ。あと、ぼくは原作本を読んでいないので、以下の感想はあくまで映画『アップルシード』についてのみのものであり、同時に前提となる知識もあくまで映画内の知識に限られることに注意。 (2) 前回確…

『APPLESEED』

わりと楽しみにしていた映画が先週末に2本、封切りになっていて、少し迷ったんだけれどとりあえず『アップルシード』(監督:荒牧伸志)を見てきた。感想を少し。 映像については、例によって技術的なことはぼくには何も分からず。アニメとCGの幸福な融合…

『花とアリス』

少し映画づいている。せっかく見たのでなにか書いておこうと思い、今回は『花とアリス』。事前知識はほとんどなしで見た(まあ、そうはいってもTVCMで流れてた「キットカット」の映像くらいは覚えていたんだけれど)。 まずはじめに断っておくと、ぼくはいま…

『イノセンス』(続き)

(3) 以前このblog内で確認したことだが、「理性」は『方法序説』においては「良識」であり、万人に公平に配分されている資源的能力である。これは能力であるという点で「精神(心)」とは別のものであるということは確認する必要がある*1。すなわち、ここ…

『イノセンス』(続き)

(2) 前回も触れた、バトーの傷ついた身体が修復されるシーンでは、どこまでがおれのオリジナルか?という問いに対し、医者(?)がDNA情報はちゃんと受け継がれてるよと答え会話は打ち切られるのだが(このシーンは特に記憶があいまい)、このやりとり…

『イノセンス』

ひさしぶりのblog更新。今回は昨日見た映画『イノセンス』(監督:押井守)について、少し考えてみたい。 昨日は『イノセンス』と立て続けに韓国映画の『ラブストーリー』も見ていて、『猟奇的な彼女』がひどく気に入っていたぼくはそっち(同じ監督クァク・…