『QED 百人一首の呪』
高田崇史『QED 百人一首の呪』(講談社文庫)を読む。以下、ちょっとした感想など。
高田崇史のデビュー作。この作家の本を読むのは今回が初めてだったのだけど、読み始めてまもなく出てくる「幽霊」「鬼」とか「呪」とかの言葉にそのまま夢枕獏の安倍晴明シリーズを思い出し、「ああ、陰陽道的なものと近代医学的なものとをリンクさせたミステリか」となんとなく思って*1読み進めたのだけど、「だいたいのところ」はその予感どおりの作品だった。
そういうふうに読んだぼくの感想としては、巻末の西澤保彦の解説にもあるように、この小説の主軸はやはり「百人一首の謎」だと思うし、それと殺人事件とのリンクもまた必ずしも成功していないと(西澤と同じように)ぼくも感じた。もっとも西澤は高田の、<パズルという「手法に淫する」過剰性>こそが「如何にも本格ミステリ的」であるために、高田の作品は「付け足し感」を感じさせないと述べているんだけど、この作品しか読んでいないぼくにはそんな風には思えなかった。正直なところ、文体のリズムは平坦だし、登場人物の博覧強記ぶりはあくまで「情報」の域にとどまっている感じがしたし*2。
たしかにこの作品の「パズル性」は、上で述べた「だいたいのところ」から大きく外れるもので、中心だと思う。そこは面白い。けど、そのパズルの過剰性もまた、ケレン味のないその他の要素によって「結果として」強まってしまっているのではないだろうか。
まあ、作者の他の作品にも当たってみようと思う。