小金持ちの怖さ2

(続き)
前日、居酒屋の勢いそのままに一人の友人の部屋に上がりこんだぼくたちは再び飲み始めたのだが、そのころには完全に疲れきってしまっていたぼくは睡魔に襲われてぼんやりしていた。部屋の主人Aがパソコンを起動し、ネットで出会い系サイトを検索し始めたのは覚えている。で、ノリのいい女友達Bが「ここは感じがいい」とか「あー、センス悪っ」とかなんとかコメントし始め、そのころにはぼくはすっかりおねむである。そこから先、記憶がない。ぼくは起きているときのことは完全に記憶している人間なので、眠ってしまったわけだ。
で、問題は翌朝、ぼくの携帯に埋まった未読メールである。すべて出会い系のメッセージで、「今日暇だったから掲示板見てたら見つけちゃいました」とか「留年決定…気晴らししたい!何時でも遊べる?」とか「結婚してる私が・・貴方のような方を誘ってもいいですか?」といったメッセージが並んでいる。。。
寝ぼけた頭もだんだん晴れてきた。ぼくは同じようにカーペットに寝ていたCをたたき起こした。事情聴取である。
一通り話を聞いて、ぼくは呆れた。要するに、こいつらは昨日の酒での話をそのままに、本当に出会い系サイトに登録したのである。ぼくの携帯の番号とアドレスを使って。ああ、そういえば「一番ヒマなのはおれだなあ」と言った記憶が、かすかにある。。。
そうこう話しているうちに、寝ていたほかの連中も次々起きてきた。会話。

ぼく:「なんでこうなるかな?」
A:「いや悪かった。でもしょうがねえじゃん。一番時間あるのお前だっていうし」
ぼく:「それとこれとは話別だろ、まったく。で、なんでこんなにメールきてるわけ?」
A:「いや、プロフィールとか作ったし、いくつかメールも出したし」
ぼく:「は?」
C:「だいじょぶだよ。直接アドレスはわかんない仕組みになってる」
B:「(あくびしながら)メール、かなり楽しかったよね。社長とかモデルとか言って。返信きてる?」
ぼく以外のみんな:(ぼくが手渡した携帯を見て、わいわい)
ぼく:「・・・とにかく、めんどくさいし、全部消して登録解除するから」
A:「あ、それキツイ」
ぼく:「なんで?」
C:「カネ払っちゃった。一万円、カードで」

びっくりである。こいつらは有料のサイトに登録し、遊んで足りなくなったポイント*1をオンラインで購入していたのだ。カネを出したのはC、独身のテレビ局社員。まったく、記者だけに好奇心は旺盛らしい。それにしても、セキュリティー意識が薄すぎじゃないか?
とにかく、ぼくは寝てしまったことを心から後悔したが、もはや遅い。流れはともあれ、とりあえずはじめは(Mのためということで)みんなで言い始めた話である。で、そこで何もしていないのはもはやぼくだけであり、そしてぼくはこのなかで一番時間に余裕がある。それになんというか、このノリに付き合いきれなかった後ろめたさみたいなものもあったりする。
部屋で飲んだ分の酒代をみんなのおごりということにさせ、ぼくはこのプロジェクトを進行させることになった。目的はただひとつ、「出会い系で司法浪人Mが出会いを見つけることは可能か否か」を見極めること。というより、ヒマな時間に登録したサイトにアクセスしてCが買ってしまったポイントを消費すれば、ぼくの作業はそれで終了だ*2
今週中には終わらせて、報告をここに上げておくつもり。報告を待て(→みんな)。
で、世の中でなにが怖いって、酔った勢いと中途半端な金持ちである。特に、忙しくて金の使い道のないやつの瞬発力にはほんと、呆れるしかないのだ。


*1:後知恵だけど、有料サイトにもポイント制と定額制とがあるらしい

*2:それにしては、サイトの選択を間違えているとしか思えないのだけど