小金持ちの怖さ1

このあいだ、大学からの友人の結婚パーティー後のちょっとした打ち上げ*1で、やっぱり大学からの友達グループで飲んでいたときの話だ。
二杯くらい飲み終わったころ、いつものように友人Mの話になった。Mは現在司法浪人中で、アメリカへの留学経験があるせいか、かなり感情表現がアメリカナイズされて豊かな、豊かというよりはオーバーなやつで、総合的な観点から見て非常に「モテない」男の子である。仲間内で飲んでいるときにいないと必ず「ネタ」にされる、そういう種類のやつだ。ちなみに、顔は普通で若干フェミニンな感じがする。
で、司法試験はみんな分野が違うのでフォローしようがないので、「せめてMに出会いの場を作ろう」という話になった*2。まず、Mがモテない理由として、突然大きくなったり小さくなったりする「声」がある。声が高く、おまけに興奮しやすいのだ*3。加えて、Mは思い込みが激しい。学生時代、なんでもない友達に「そろそろ付き合おうか」と言ってドン引きされる、ある女の子に付きまとい、友達総出で「それはストーカー行為だ」と説得する、などなど、その手の小咄には困らない人間なのだ。
ぼくたちにしてみれば当然、知り合いの女の子を紹介できるヤツではない。評価を下げて友達を失うだけ。合コンなんてもってのほかで、どう可能世界をシミュレートしても、幸福な結末は間違いなくありえない。
で、ああでもないこうでもないと飲みながら喋ってるうちに、中の一人が「ネットの出会い系は?」と言って、ぼくたちは少し考えた。まず、ネットならば「声は聞こえない」。あの恋愛関係のはじめの関門にひっかかるMの甲高い声が、女の子には聞こえないのだ。
それに、チャットにでも手を出さない限りは、やり取りにはひとつひとつ「間」があるだろう。それならばすぐに興奮して人の話を聞けないMでもきっと何とかなる。次の関門もクリアだ。司法試験の勉強はきついだろうし、その合間の息抜きとしてもいいかもしれない。
とまあ、ほんとにくだらない話、それも本人がいないところでぼくたちは大いに盛り上がり、ぼくも司会で疲れていたりしたのでアルコールが回るのも早く、そのままあーでもないこーでもないと言いながら、ぼくたちは店を変えて飲み続けた。
で、翌朝。一緒に飲んでいた友人の部屋である。携帯が点滅しているのでメールチェックをしてみると、未読メッセージがずいぶん並んでいる。ぼんやりとチェックしながらぼくは昨日のことを思い出していた。
(続く)


*1:ぼくは司会を務めたので

*2:本人のいないところで、まったく。。。

*3:だから彼にとって司法試験の一番の難関は「面接」である