anan のカラダ特集

友達が置いていったanan(マガジンハウス)をめくる。
ぼくはこの手の雑誌(の男子版)を読んでいた記憶がほとんどなくて、もっと全然「ファッション」よりのメンノン*1とかも10代を通り過ぎてからは買ってない。実際服とか、もうブランドやショップが決まっちゃってる感じだし。だから、たまにこういう形で目にすると新鮮で意外と面白かったりする。情報ってよりも、「読み物」として。
で、今回はなにやら恒例の「カラダ」特集らしく、表紙を長谷川理恵*2が飾っている。人選がちょっと安易じゃないかとも思うけど、とりあえずペラペラペラ。
で、その中に「男性250人アンケート」から見る「男のカラダを快感で満たす究極のセックス・テクニック」という、これまたいかにも安易な(それでいて anan らしい)ページがあって、なかなか笑わせてもらった。
企画の前提自体が「愛する彼をもっとよろこばせてあげたい」っていうものなんだけど、それをテクニック的な部分に持っていく流れは、なんていうかその趣旨自体を男子中学生ちっくな感じにしてしまっていると思う。「こうすれば感じる」みたいのは、男性向け(というか、男子中高生向けの)エロ本の得意分野なわけだし(まあ、そんなに詳しくはないですが・・・)。
で、思春期にそれを一通りくぐり抜けてきている世の一般男子にしてみれば、いかに「愛する彼をもっとよろこばせてあげたい」っていう趣旨のもとで企画を組んだとしても、そっちの方向(エロ本的、エッチ映像系)へと想像力が流れるわけです。例えばこの中のアンケートには、

「マグロ状態の受身の女性が多すぎる」(33歳・教職)
「与えている快感に比べ、受け取る気持ちよさが少ない。不公平だ」(26歳・システムエンジニア
「69が好きなのに応じてくれない」(20歳・学生)
「制服などのコスチュームを着て、腰を振りまくってくれたら最高」(29歳・製造業)

などといった男の回答が寄せられているんだけど*3、3つ目4つ目なんかは完全にエッチビデオの想像力だし、1つ目2つ目と合わせてもこれらの回答が一般論としてのセックスというか、スポーツとしてのセックスについてのものであることがよく分かる*4。だいたい2つ目の回答なんかを冷静に考えてみれば、かなり頭のイタイ男の子ぶりが発揮されていて笑える。
要するに、ここでは企画の前提部分が完全にスルーされていて、独立したカテゴリーとしてのセックス、というかせいぜい個人の「属性」が吐露されてるにすぎない。で、そうした行き違いの部分は無視するように、コメントしている人もAV監督だったり、風俗ライターだったり。
だいたいぼくの周りを見渡しても、いい男はセックスをコミュニケーションの一部として考えているから当然セックスだけでは虜にならないわけで*5、逆にそこだけ突出してるとなんかバランスが悪かったりもする。
記憶が確かなら、「セックスできれいになる」っていう特集を女性誌ではじめに組んで売り上げを大幅に伸ばしたのも anan だったはずで、それはなんだかんだ言ってもそれまで「全的な経験」として捉えられがちだった女性のセックス観が変化している(きた)ことの象徴的な例だったのだと思う。
でも、そこから生まれた「スポーツとしてのセックス」もまた、「快感の資源をくみ出す方法」に特化することができないで、その前提に愛とか恋とかを微妙に温存している。この特集の場合、「男性主導」に対して「女性主導」を持ってくることでそれを「性的なコミュニケーション」として扱おうとしているんだけど、それをテクニック的なことだけから説明しようとするとコミュニケーションにならないし、それを補おうとしたアンケートは単なる「属性」表明で、あってもなくてもいいようなものになっている。
そんなこんなでかなりゆるい内容になってて、それが面白かった。
それというのも、「気持ちよくしたい」っていうのが「この人を」っていう目的語抜きじゃ語れない*6のに対して、「気持ちよくなりたい」っていうのは自分ひとりだけが特定されるような、自足的なものだからかな。セックスもコミュニケーションのひとつだし、部分なので、その関係を逆にさえしなければ問題ないと思うんだけど、それじゃこういうのの企画にはならないのかもしれない。
まあ、恋愛のコミュニケーションからカラダ的な部分だけを抜き出すとただのハウツーものになってしまういい例。テクニック的なこともそれはそれで大切なことですが。
ただ、モテからはちょっと遠いんだよね*7
これを補足する意味では、やっぱ前にここ(http://d.hatena.ne.jp/a-shape/20040429#p2)でも触れた『不純異性交遊マニュアル』(速水由紀子宮台真司筑摩書房)が必読だと思う。
あと個人的には次のような感覚もある。それは、人の性に対する「属性」の細分化が進行することによって、それまではそうした諸属性の下部にあってそれらを支えていたロマンティックなものが一度崩壊し、そして新たに「ひとつの属性」として復活したのではないかという推測*8


そんなことより、腰骨が男の性感帯だとはじめて知りました。


*1:いまでもメンノンって言うのかな。何気に不安

*2:この人も手を変え品を変え「長い」よね

*3:「おいおいお前いくつだよ」みたいな部分もある、ほんとに

*4:それにこういうアンケート、ちゃんとやってたとしてもかなり「ちゃかして」しまうよね、答える側としては

*5:そんなんだったらこの世は風俗嬢の天下なわけだし

*6:それができたら「神の愛(アガペー)」だし

*7:ここらへんを理解してくれない女の子は多い

*8:解離的と呼ばれる時代状況をここに短絡させることもできる(かもしれない)