つくば市長選

ぼくの心のふるさと(いったいいくつあるんだか)の茨城県つくば市で11月に市長選挙がある。いまはもう引っ越したけど長いこと住んでいて、そういうのにちょっと詳しかったりすることもあって、いまも向こうに住んでる友達から「だいたいのところ教えてよ」とのこと。市議のほうまで書くとめんどくさいしフォローできないけど、まあ市長分くらいはいいかと思って気軽に。つうか、お前ら政治に目覚めたか?つくばの宿命だね。<以下、ピンポイントの「ローカルねた」です>
細かいこと書く前に、「つくば」の特殊性について少し触れておこう。
つくばは「研究学園都市」として有名な、計画都市である。山と森しかないところに国家の「えいや」*1でつくられた人工的な街。そこに、国の研究施設やら大学やらが移設されてきて都市部を形成し、それが現在のつくばの中心となっている*2
とはいっても、実際の「つくば市」は都会的な街ではない。だいたい、「つくば市」が市として誕生してから、谷田部町や桜村が合併して「つくば市」になってから、まだ20年もたっていない。若い街なのである。政治について考えるときも、この点がポイントになる。
どういうことか。
簡単に言うと、昔からの「農村部」のなかに、離れ小島のようにぽつんと研究都市という「都市部」が配置されている「市」がつくば市である。これは例えば「住宅と商店街」とか、そういうレベルの話ではない。背景となっている文化がまるで違う生活圏が二つ、同じ「つくば市」の中に共存しているということである。と同時に、昔からの「地元民」が暮らす周辺部(農村部)と、おもに全国からの移住民つまり「新住民」*3の住む中心部(都市部)とが、比較的明確に区別できる市であり、この融合は現在に至るまで進んでいなかったりする。
それを端的にあらわすのが、「選挙」である。
県レベルで考えてみよう。いかに弱くなったとはいえ、茨城県は「自民党王国」である。茨城県は農業・畜産をおもな産業としており、そういった点を考慮に入れてもいいが、選挙もまた「地方的」な手法がまかり通っている。もっともこれもまた「県北」「県南」で分裂しており、東京に近く住民意識も都市的な県南では自民党の基盤は弱体化している。
さて、つくば市についてもこうした状況が当てはまる。
広大な市の大部分を占める農村部については、いまだに土着的で利権・カネが動く保守的な選挙が横行している。いわゆる「ヒト・モノ・カネ」である。地区単位での「自発的な」票の取りまとめなどは別に珍しい話ではない。
それに対して、都市部(学園都市部)はそうした土着的な選挙の伝統そのものがない。ないとは言わないまでも、希薄である。移住民であり、地方ではなく国の政策のレベルに親和性のある新住民においては、国のレベルでの政治の情勢が選挙を左右する。「イメージと情報」の選挙である。
問題は、この「農村部」と「都市部」との「非対称性」にある。周辺部は圧倒的に広く、昔からの選挙の伝統があるため投票率も高い。というより、合併前からの職員がまんべんなく分散しているしているため、市役所との繋がりが深いのである。当然、選挙への意識も高く、地元就職率も高いため業者的な利権にも票が左右される。
それに対し、中心部は研究者や学生に代表されるように、圧倒的に定着率が低い。「いつかどこかに帰る人」として自らを位置づけている人たちが多いのである。結果、市レベルでの帰属意識は低く、選挙への意識も低くなる。
そのため、選挙は「汚くなる」傾向がある。ここまでを踏まえてもらったうえで、今回の選挙に立候補している人たちについて、実際に見聞きしたことやうわさを交えて簡単に切っていく。地方新聞によれば有力候補は二人ということなので*4、彼らを中心に。もちろん、敬称は略である。


藤沢順一(無所属)
現職の市長。今回三期目を目指す。県議を経てつくば市長へ。この人については職員の中での評判がよくない。自分のアイディアをトップダウン的に実行する傾向があるらしく、それが保守的な市の職員との折り合いを悪くしているようだ*5。そのため政策面への批判はわりと少なく、対立候補も「問題発言が多い」などといった個人攻撃を中心に選挙戦を展開している。土着の利権(カネ)を嫌っているらしく、公共の仕事を狙う地元の業者と激しく対立している*6。そうした経緯もあり、自民党とも手を切ったらしい。その攻撃性がネックか。
・市原健一(自民党推薦)
県議。以前のつくば市長選挙では上記の藤沢氏の選挙を率先して応援するなどしていたが、市長の政治手法に反発する自民党と地元業者の支援を受けて今回立候補。だが、立候補するまでには相当もめたらしい。友人の話では、この人についてはすでに中傷のビラがまかれている(愛人が2人いるという内容。個人名まで特定できる詳細なものだそうだ)ということだが、個人的に知っている情報よりは軽い*7(笑)。もちろん下半身と政治能力とは無関係だが、それにしても県議としての実績も浅いし、また地元の利権とつながった地方農村的な政治性も気になるところである。
・北沢仁(無所属)
確か、以前公職選挙法違反で逮捕にまで至った木村操元市長の後継的な存在だったはず。前回選挙では肉薄したが現職に及ばなかった。
野口修(無所属)
市議。「市民」を強調する市民派らしい。ブログも開設していたけど、基盤も実績もネームバリューもないため、正直なところ勢力として弱い。都市部を活動の拠点とする「弱さ」もあるといえる。


と、こんなところ。
都市型のイメージ選挙が通用しない部分がまだまだつくばにはあって、その「負」の部分を温存させておくことについては、ぼくは個人的にはきっぱり否定的です。特に、業者利権については現状以上に廃絶の方向へ進めていかなければいけないと思うので。
ただ、政策レベルでそれほど相違が明確になってないのはイタイよね(たとえば茨城新聞http://www.ibaraki-np.co.jp/の10月31日記事:<「男女共同参画社会」で4候補の姿勢ただす つくば市長選>などを参照)。まあ、細かい部分で違いを出せるくらいの能力がある人が出てきても、ここまで述べてきた、つくばの選挙をめぐる「構造的な問題」が打破されない限りは難しいだろうけど。
友達へ。
というわけで、以上が情報と意見。ぼくはそこの選挙権はない人だから、あとは自分たちで考えて。もっと裏側の話もあるけど、まあ立場っていうのもあるからさ。
つうか、これくらいの長さの文章は「読めよ」。それが一番不安だよ。<追記>
大きな祭りのない町って、「選挙が祭りになる」ような気がするのはぼくだけでしょうか。


*1:まあ、いろいろ調べたんだけど

*2:まあ、簡単に言うと

*3:筑波大学を中心とした大学生などもここに含まれる

*4:常陽新聞http://www.joyo-net.com/の10月31日のヘッドラインより

*5:田中康夫か?

*6:本人が金持ちだからだね、これは

*7:軽いし、少ない